クリティカルシンキング 悩みを「真の課題」へ -フレームワークの活用例 –

認知/思考

クリティカルシンキングは様々な場面で有効に使える思考術で、目標や課題の設定、問題の解決、他人の説得や交渉などの活用シーンがあります。

大まかな流れとしては、目標設定→課題設定→問題解決になりますが、今回は課題設定について取り上げたいと思います。

前回記事↓

今回も参考書籍のポイント(*1)を挙げながら、課題設定についてみていきたいと思います。

課題設定が必要な時

課題設定はどんなときに必要でしょうか?
大きく分けて「目標に対して行うアクションを考えるとき」と、「悩みを「課題化」して、解決に近づけるとき」があると思います。

目標に対して行うアクションを考える

課題の設定の場面としては、一つは目標を設定した後に、目標に向けたアクションを考えるときです。目標に対する現状とのギャップを明らかにし、そこから課題を見出していきます。

悩みを「課題化」して、解決に近づける

課題設定が必要なもう一つのケースは、何か思い悩んでいるときです。
「悩みを解決したい」と思うことは多いですが、いきなり解決に向かうのは大変かもしれません。

批判的思考のポイントは、
「悩み」を「課題」にしてみる事で、問題の本質を捉える事になると思います。

ある問題について、あれこれと思いわずらっている状態が「悩み」です。
悩んでいるときの行動パターンは、ぐるぐると頭で回ってしまい、進展が見られない現象。

この状態から、悩みの正体を捉えるプロセスが必要になります。
そのため、以下ではまず「課題とは何か?」について確認した後に、問題を整理して課題を明らかにする過程について見ていきたいと思います。

課題とは? 「問題」と「課題」の違い

ここで課題とは何でしょうか。

・「問題」は、組織が目標とするものと、現状との間にあるギャップのことで、目標達成のために、解決しなければならない事柄です。

・「課題」は、目標と現状とのギャップを埋めるために、やるべきこと。問題を解決するために起こす具体的なアクションです。

【マイナビ】「問題」と「課題」はどう違う? – ビジネス例で解説【ビジネス用語】*2)

一言で表すとい、課題とは「問題を解決するために最も行うべきこと」になります。

問題は複数あるのが通常なので、課題も複数出てきます。
各問題・各課題通しの関係性も複雑な場合が多いです。
そういうカオスな状況下で、「どの課題に取り組むべきなのか」という厳選が必要となるのです。

そのために必要なステップとしては、

  • 問題を分解し、課題を列挙する。
  • 各課題の中から「真の課題」を厳選する

問題を分解し、課題を列挙しながら真の課題を探る

ポイント① フレームワークを使って問題を分解する

分解例1:ロジックツリー

ロジックツリーなどを使って問題を分解し、整理していくプロセスが必要になります。

参考書籍においても課題を明らかにする為に、問題を分解することから始めています。
問題の原因を探り、どんどん深堀していく形です。

例を挙げると、自動車メーカーのトヨタは、自社製造車の故障やインシデントが発生した時に、「なぜなぜ分析」という方法をしています。
これは、問題の原因を突き詰めるために、なぜそれが起きたのかを5回繰り返して言って、根本原因を探っていく方法です。

一般的にはロジックツリーと言われ、「原因追求ツリー」や「問題解決ツリー」などがあります。*3)

【BOXIL MAGAZINE】原因究明ツリー(WHY)の例 ー ロジックツリーとは?問題解決の手法、作成ノウハウと3つの種類を解説 ー

ロジックツリーを使うポイントは、問題を漏れなく分解すること(MECE)です。*4)

*1)例えば、会社の利益不調の問題を解消したい場合に、利益率の観点で問題を整理する場合は、以下のように整理すればMECEとなります。

  1. 売上が少なさは問題ないか
  2. 売上原価が高さ(利益の圧迫をしていないか)
    1. 売上原価のうち、固定費は問題ないか
    2. 売上原価のうち、変動費は問題ないか

分解例2:フィッシュボーンチャート

フィッシュボーンチャート(特性要因図)とは、複数の原因と1つの結果を図にまとめたもので、
背骨や小骨で構成されるため、魚の骨のような見た目です。*5)

詳細はリンク先になりますが、これを使うことのメリットは、以下のようなものが挙げられます。

  • 原因と結果の関係を視覚的にわかりやすく捉えられる
  • より複雑な因果関係(原因同士で影響しあっているケースなど)を表現できる

ポイント② 「意味のある切り口」をして本質課題を探る

問題を分解・整理していくプロセスで、より意味のある切り口で分解していく必要があります。

そして、意味のある切り口で分解するには、その分野の知識が必要になります。

本書でも、ビジネス用に3c分析などが紹介されていましたが、どのフレームワークで分析するかは該当分野に対する知識必要にはなってきます。

分野・業界知識に応じて最適なフレームワークを使っていくことがポイントになるでしょう。
参考までにフレームワークの種類を紹介します。

4C・3C分析

これはビジネス全般的に使えるモデルで、分析の視点を「顧客」「自社」「競合」「販売経路」の観点で見ていく方法です。*6)

メリットとしては以下があります

  • 色々な業種でオールマイティーに使える
  • 4つの視点によりMECEな分析も可能になりやすい
4P分析

これは主にマーケティングで使える分析手法です。*7)
視点を「商品」「価格」「プロモーション」「販売」の観点で見ていきます。

バリューチェーン分析

これは企業の製品開発から市場への供給までの流れ(バリューチェーン)の流れにそって、問題点をあぶりだしていく手法です。*8)

視点を「調達(資金や材料、人材などの経営資源)」「製造」「販売」「メンテナンス」のフローとして捉え、問題を細分化していくことができます。

4M分析

これは主に企業の製造分門や品質管理部門向けの分析手法です。*9)

「人材」「機械」「材料」「方法(製品の製造マニュアルや作業標準など)」の観点で問題を整理していきます。*9)

各課題の中から「真の課題」を厳選する

課題の「解決困難度」と「影響度」は?

課題を厳選するために2つの視点を使う方法を紹介します。
これは、心理学におけるストレスマネジメント方法(*10)の応用で、今置かれている状況下で、できる最大限の事を「解決困難度」と「影響度」の2軸で絞り込む考え方です。

  • 解決困難度
    まず課題解決の難しさを評価します。
    例えば商品の売上不足という問題があったとします。
    「商品単価を上げる」事を課題とした際、それが顧客離れを招くリスクが高い場合は、その課題の解決困難度は高いため、課題から除外するようになります。
    解決困難度で評価することで、できそうにないことは諦め、できそうなことに注力できるようにします。
  • 影響度
    その課題を解決することで、問題全体にどれほど良い影響が出るかです。
    よくパレートの法則で、問題の8割は2割の因子によって引き起こされるという法則がありますが、この考え方を参考に全体に影響を与える要素を確認していきます。

課題マトリックスを使って、優先課題を確認

次に、以下のような課題マトリックスを参考に、優先的に対応すべき課題を確認していきます。

例えば影響度が高く、解決困難度の低い課題は「優先課題」となります。
対し、影響度が低く、解決困難度も低い課題は「簡単な課題」となるので、猶予があれば取り組むというようゾーンです。
影響度が高く、解決困難度も高い課題は「検討課題」とし、優先課題の状況と比較し取り組み可否を検討します。
影響度が低く、解決困難度の高い課題は「放置課題」とし、当面は取り組み不要な課題となります。

【課題マトリックス】

その上で、上記の説明で言及した分解・整理した課題に照らし合わせて、課題を厳選します。
洗い出した課題の「解決困難度」と「影響度」を確認し、課題マトリックスにあてはめて優先課題を見ていきます。
この例では、影響度が高く、解決困難度の低い完全な優先課題はないですが、比較的解決のコスパが良い課題を確認していきます。この場合課題4が優先課題になってきます。

【課題分析の例】「解決困難度」が低く、影響度も比較的多い「課題4」を対応課題とする例

参考

*1) 実践型クリティカルシンキング 21世紀スキル
https://www.amazon.co.jp/dp/B00LFLOIP6/ref=cm_sw_r_tw_dp_TB569GES0P5348B5JW9W

*2)[マイナビ]「問題」と「課題」はどう違う? – ビジネス例で解説【ビジネス用語】
https://news.mynavi.jp/article/20180326-596685/

*3) [BOXIL MAGAZINE] ロジックツリーとは?問題解決の手法、作成ノウハウと3つの種類を解説
https://boxil.jp/mag/a3116/

*4)[BOXIL MAGAZINE] MECEとは?
https://boxil.jp/mag/a2997/

*5) フィッシュボーンチャートとは? 初心者でも3ステップで完成!
https://studyhacker.net/fishbone-diagram

*6) 実例で学ぶカンタン3C・4C分析!
https://sogyotecho.jp/3c-4c/

*7)【具体例で解説】4P分析とは? 目的、分析のポイント、企業事例
https://cs.oricon.co.jp/michitari/article/264/

*8) バリューチェーンとは?【わかりやすく解説】
https://www.kaonavi.jp/dictionary/value_chain/

*9) 4M【製造業や品質管理における4Mとは
https://www.smartmat.io/column/inventory_contorol/8077

*10) [小杉 正太郎] ストレスマネジメントマニュアル
https://www.koubundou.co.jp/book/b157021.html

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