【対人関係】コーチングがあらゆる分野で必要な理由

学び

最近、コーチングがビジネススキルとして注目されています。
コーチングの基本的な考え方は、「相手の潜在能力や長所を信じて伸ばす」「意見や価値観を尊重して導く」といったもの。

一般的にコーチングは、管理職や教育関連に必要なスキル・知識と思われがちです。
しかし、コーチングはあらゆる分野・人にとって必要なスキルになるかもしれません。
今回は主な効果も踏まえて、コーチングの必要性について書いていきたいと思います。

コーチングの知識は「受ける側」にとっても必要な理由

ティーチングとの違い

コーチングというと普通は「コーチする側」に特化したスキルのような気がします。
しかし、コーチングは受ける方にとっても重要な知識であると言えます。

コーチングはティーチングとは違うと言われます。
テーチングは教師(上司)が生徒(部下)に物事を教えていく、つまり外からの働きかけことです。
対しコーチングは、相手の能力やマインドを引き出していくこと、つまり内からの働きかけになります。

これまで企業や学校でも「叩いて伸ばす」「詰め込み」が基本的な教育姿勢でした。
見直されつつはあるも、いまだ上下関係がエスカレートすることによるパワハラも後を絶ちません。
精神論的・直情的な方法では、相手を委縮させて可能性を閉ざすことになります。

加えて、「詰め込み」では相手の主体性が削がれてしまいます。
主体性が創造性にもつながると言われており、そこにコーチングの必要性があると言えます。

不健全な上下関係に気づくために、コーチングの理解が重要

コーチングのベースには「人を大切にする」という思想があります。
これはだれしもが潜在能力を持っていて、それを伸ばすために、当人が持っている「考え」「価値観」を尊重するという考えです。

だからこそ、
コーチングを受ける側にとっても、「相手のやり方が正当なものか」「不健全な上下関係になっていないか」を見極める必要が出てくるのです。

コーチングの基本的な効果

コーチングの効果について、まずは基本的・全般的なデータから。

国際コーチング連盟(ICF)が行なった調査によれば、コーチングには生産性と質の観点で大きな効果があると言われています。*2)

  • 仕事の成果の向上
  • 職場環境(チームワーク・コミュニケーション)の向上
  • 内面的要素(モチベーション、自尊心)の向上

さらにICFによれば、コーチングの本質的な必要性を以下の観点で挙げています。

  • 自分が自覚していない問題に気づける
  • 自分の問題点を、受け入れられるようにする

自分を成長させたいと思っても、何をどうすればよいのかわからない場合や、問題がどこにあるかもわからない場合があります。

そもそも自分が自覚していない自分自身の問題を見つけることは、他人に指摘されても理解できない、あるいは受け入れられないことがあります。

https://coaching-intl.com/coaching-effectiveness-data/

自分の問題を受け入れるのは、容易ではないことです。
なぜなら、自身の弱点を認めて向き合うことには「自尊心を損なうリスク」があるからです。
そこに強制的なやり方で介入すると、相手はやる気を失ってしまいます。

コーチングではこのような場合、
相手の課題の本質を見極めて、本人に受け入れてもらうようにしていきます。

例えば、営業成績の落ちている社員に対して、テレアポや訪問回数が落ちていたとします。
単純に数字を改善するのではなく、様々な質問を駆使しながら本人の経緯をヒアリングしていきます。

その中で、
「仕事に対する目標を見失っている」
「自分の仕事のやり方が通用しなくなってきて、やる気を失っている」
という当人の課題を見つけていくのです。

さらに、本人の人的資源(長所・スキル・マインドなど)を活用する観点も踏まえて能力を引き出していきます。

短所よりも、長所を伸ばすことの重要性

コーチングにおいては、相手の長所を伸ばすことが優先されます。
より厳密には、本人も自覚していないような隠れた長所」を発見していくというやり方です。

ポジティブ・フィードバック

基本的なやり方としては、業務中の相手の良い言動を指摘(ポジティブ・フィードバック)します。
ポジティブ・フィードバックをしながら、相手の能力面や姿勢面の良さ承認」し、本人に自覚させていきます。

あるメタ分析(多くの研究成果を取りまとめた論文)でも、ポジティブ・フィードバックの重要性が指摘されています。*3)
この調査では、受け手の仕事に対するコミットメントや姿勢、パフォーマンス,さらには上司に対する信頼などの28の指標に対するメタ分析を行っています。
即時的(つまりその場で指摘する)な報酬行動(褒めるなど)は、懲罰行動よりも効果が高いと提示されています。

ポジティブ評価だけで良いのか?

しかしながら、良い面ばかり指摘しても良いのか?という疑問もあります。
上記で紹介したメタ分析の研究でも、
実はネガティブ・フィードバックも、ポジティブ・フィードバックには劣るもののプラスの効果はあるとされています。

そのため、ネガティブ・フィードバックには以下のことが必要になります、

  • 人格否定につながらないよう、「事実」と「然るべきビジョン」をフィードバックする
  • 指摘後の改善経過を見ながら、フォローを忘れないようにする
  • ポジティブ・フィードバックとセットで評価する

一度にたくさん欠点を指摘されると、エネルギーが低下して、結果的に行動変化に結びつかないのです。
あれのこれも欲張って指摘するのは、上司の側の優先順位の付け方が甘い証拠。くどいお説教は、逆効果なのです。

コーチング入門:日本経済新聞出版:松瀬理保、 本間正人

ニュートラル・フィードバックという方法

また、ポジティブでもネガティブでもない、ニュートラル・フィードバックという手法もあります。
これは、相手の行動に対して「価値判断抜きに事実関係だけを伝える」という手法です。

例えば、会議で発言の無かった部下に対し、「今回の会議では発言は特に無かったね」と言ったりします。
発言しなかったのにも理由があり、例えば会議の雰囲気が重く感じていたなどのケースもあります。
頭ごなしに否定してしまうと、やる気を損ねてしまうリスクがあります、ニュートラル・フィードバックによってそれも防げます。

会議で発言をしなかった場合、「その議題に対して興味関心が不十分ではないか?」という懸念も出るかもしれません。
しかし、いきなり原因まで踏み込まず、事実のみを伝え、あとは本人に考えてもらうという方法です。

「潜在能力」を引き出すのがコーチングの本質

潜在能力を引き出すというと、少しスピリチュアル的かもしれません。

しかし、人間にはもともと潜在能力が備わっているという考え方は、来談者療法で有名な心理学者、カールロジャースも提唱しています。
ここでの潜在能力とは、人が「自ら考えて答えを出していく」力の事と言われています。

ロジャーズが大切にしていることの一つに、「人間には成長に向かっていくための資源や回復するための能力が潜在的に備わっており、(そういう資源や力が元々備わっているのだから)その人がどうしたいのか、どう在りたいのか、というのはその人自身が一番知っている」という考えがある。ロジャーズはこの考え方を前提に、相談を受けるときは、自分(聞き手)が持っている専門的な知識や意見を伝えるよりも、相談者(話し手)の主体性を尊重し、その人が自ら(その人にとって)建設的な選択ができるようサポートすることに重きを置くようになった。

立命館大学人間科学研究所 https://www.ritsumeihuman.com/essay/essay-2405/

そして、その能力を引き出すために必要なのが、「傾聴」のテクニックとなります。

セルフ・コーチングの必要性

情報化や技術の進歩によって、仕事以外でもスキル向上の重要性が増してきていると思います。

そういった時代の中で「ITやAIのスキル」「英語力」「独立するスキル」などの個別スキルにも増して、「成長するスキル」が求められるかもしれません。
「今、何ができるか」「何を知っているか」ではなく、成長できる自信を持つ事が重要なのだと感じます。

スキルが多様化する中で、自分自身もコーチする「セルフ・コーチング」というのも注目されてきています。
自分を客観的に観察してより良い方向で導いていくためにも、コーチングのスキルは誰にとっても重要になってくると思います。

リンク

*1) [ICF] コーチングとは
https://icfjapan.com/coaching

*2) [ICF] コーチングの効果 ~データから見る~
https://coaching-intl.com/coaching-effectiveness-data/

*3) [産業・組織心理学研究] ポジティブおよびネガティブ・フィードバックが部下のコミットメントおよび成長満足感に与える影響
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaiop/30/2/30_159/_pdf/-char/ja

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