よく「努力は報われる」と言う言葉を聞きます。
しかし「報われないこともあるのでは無いか? 」「真面目に取り組み続ける意味は?」という疑問もあると思います。
このような疑問は、誰しもが経験し得る「スキルの伸び悩み」の時期に起きやすく、
モチベーションの維持や目標達成の障害と言えます。
今回は以下の内容で記事を書きました。
【課題】
・学習心理学の観点で「成長の伸び悩み」をどう解決するか?
・ また、モチベーションの維持をどうするか?
【対象の読者】
・「努力」の必要性に疑問を持っている
・「真面目さ」や「一生懸命さ」の活かし方を知りたい
・スキルアップや目標達成のためや業績の伸び悩みの脱し方のヒントを得たい
「努力」が幅を利かせ過ぎている現状
まずは、この「努力すること」「頑張る事」について、現状の整理したいと思います。
「努力は大切だ」ー よく聞く言葉ですが、これは本当なのでしょうか?
よく成功者は努力すれば道は開ける、という事を言われます。
もちろん人が一生懸命頑張っている姿勢は尊敬できます。
しかしその一方で、継続に疲れてしまうこともあると思います。
努力が大切だと言われる状況
努力の大切さは、どんな場面で実感するでしょうか。
例えば、以下のような場面が挙げられると思います。
・長時間残業をして沢山仕事をすると、周囲から評価される ・職場で不当な扱いを受けても、そういう逆境を乗り越えた人が偉い ・常に限界に挑戦して、高みを目指し続けるべきである
他にもいろいろな場面があると思います
一生懸命頑張ることは素晴らしいと教育されてきました。
しかし、実生活や仕事の中で、精神論がかなり幅をきかせている気がします。
なぜ頑張りすぎてしまうのか?
頑張りすぎは良くないと頭ではわかっていながら、なぜ無理をしてしまうのでしょか。
頑張りすぎてしまう理由の一つには、その高揚感にあるかもしれません。
中野信子さんの著書「努力不要論」*1) を引用すると、
努力をしているときは脳の報酬系が活動することで、人間は快感を感じるそうです。
そして、何度も頑張りすぎてしまうのは、努力の高揚感を再び味わいたいとう一種の麻薬的な状況が原因になっているかもしれません。
またそこには、日本特有の労働文化も影響しているかもしれません。
例えば
「周りが皆頑張っているのだから、自分ももっと頑張らなくては」
「無理な業務量ではあるけれど、上申きにくい雰囲気がある」
と考えて頑張ってしまうパターンです。
ポイントを絞った努力の必要性
心と体の健康を保つためにも、過剰な努力は避けるべきです。
しかし、その一方で努力が無駄と言うのは極論だと思います。
実際、プロのスポーツ選手や一流のビジネスマンの努力量は膨大で、陰ながら相当な努力をしていることもよく聞きます。
それに努力は無意味と思ってしまうと、モチベーションが落ちる原因にもなりますよね。
そこで、以下では「努力の必要性」を心理学的に考えた上で、ポイントを絞った努力の重要性を提案していきます。
スキルアップにおける努力の必要性
努力が大事だと言われるのは、主に何かの技能を高める時ではないでしょうか。
そこで、ここでは「努力」と「スキルアップ」の関連性についてみていきます。
スキルアップの停滞期(=プラトー)とは?
勉強やスポーツ、仕事においても伸び悩みの時期はあると言われ、心理学においては、そのような状態のことをプラトー(高原状態)と呼びます *2)↓
初心者の頃は覚えることも沢山あって、順調にスキルは伸びていきます。
しかし、途中から成長を実感できない「プラトー(高原状態)」に差し掛かかってしまいます。
要因としては、マンネリ化や疲労、知識技能の整理不足などがあると言われますが、この時期というのは半年〜2年ほど続くとも言われます。
社会人で言うと2年目の頃でしょうか。
そしてこの時期に挫折してしまうことで、継続がストップしまうのです。
このプラトーというのは、出口の見えない長いトンネルのようなもので、精神的にも負担のかかる時期です。
プラトーを脱する鍵「限界的練習」
心理学において、このプラトー期を脱する有効な手段として「限界的練習」が提案されています(*3)
これは単純に限界に挑戦していくという意味ではなく、
・具体的な目標設定のもと
・自分の限界ラインの課題を設定し
・それをクリアするために集中力を高めてトレーニングを続ける
というものになります。
長時間やれば良いという訳ではなく、集中力が持つ間はしっかり負荷をかけて取り組むという点がポイントです。
「真剣な努力」「真面目な態度」を、報われる努力に活かす
真剣な努力は科学的にも効果がある
上記で限界的練習について言及しました。
さらに限界的練習では、実力の70%程度の余力を残した練習より、実力の100%を出して集中的に行う方が効果があると言っています。
つまりこれは、適当に7割ぐらいの力で流すより、100%本気で頑張ることが効果があるということになります。
スキルアップにおいて、適当では効果は発揮できないようです。
他にも、「真剣な努力」の必要性について紹介したいと思います。
例えば最近言われている「フロー状態」というのも、スポーツやビジネスの世界でパフォーマンスを上げるのに有効と言われています *4)
このフロー状態というのは好奇心や自分の意思を尊重することで生まれますが、ベースにあるのは「一生懸命になれること」だと思います。
そして、「真剣さ」や「真面目さ」が、上達には重要な要素であると言えます。
努力における「真面目」のメリット
真面目さがあれば、
・根気強く努力を継続できます。
・自分の課題にとことん向き合えます。
・主体的かつ積極的に物事に取り組めます。
一方、「真面目は損するのではないか?」という言葉もよく聞きます。
真面目に頑張ったところで、他人に利用されたり、無駄な労力を費やしたりという懸念はあるからです。
真面目さは、自己実現のためにこそ輝く特性
だからこそ、自己犠牲的な真面目さではなく、自己実現のために真面目さを集中投入すれば良いのです。
その上で余力があれば他者貢献も良いでしょう。
真面目さというのは他人に利用されるものではなく、自分で利用するという感覚で生きていくと、幸福度もグンと上がります
過剰な精神論に注意 ! 真面目さを自己防衛しよう
ところが、現代日本では「真面目さ」が過度に意識されています。
仕事や家事、勉強などあらゆる場面で、一生懸命に頑張り続けることが要求されていて、正直窮屈ですよね。。
それが自己実現であれば良いのですが、誰かの期待に応えるためだったり、社会のレールに従っているものだと、いずれ限界は来ると思います。
そしてもっと危険なのは、
自己実現と思い込まされて、実情は不当な扱いを受けている場合です。
いわゆる「やりがい搾取」という言葉が当てはまりますね。
例えばブラックな働き方の放置や、助言はしてもらえるけど言い方がきついなどの状況には注意が必要でしょう。
真面目さと言うのは、安全な環境でこそ重宝されるべき
例えば、仕事のスキルで伸び悩んでいる時があるとしましょう。
そんな時、上司や同僚からハラスメント的な言動を受けても、「自分が悪いんだ」と思ってしまうパターンも多いと思います。
中には「結果が全て」と言う厳しい意見もあるかもしれません。
しかし、プラトーやスランプというのは人間である以上、経験し得るもので個人の責任ではありません。
だからこそ心理的支援を求めるべきで、そういった配慮がない環境からは逃るべきだと思います。
参考リンク
1) 中野信子 努力不要論
2) 上達曲線とプラトー
3) 限界的練習
4)フロー状態
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