キャリアの成功について心理学的な分析を紹介

スキル/キャリア

今回は「キャリア」に関してになります。
キャリアをどう進めるかが大きなテーマとなる中で、心理学の観点で見ていきます。

一般的に、キャリアが上手くいくというのは、昇進や出世・プロジェクトの成功が挙げられますが、それ以外にも精神的な意味での成功も注目されており、心理学の分野でも研究がなされています。

今回は、以下のような順番で整理していきたいと思います。

  • キャリアの成功とは?
    → 客観的成功と主観的成功について
  • キャリアの成功を阻む要因について
    → ネガティブ因子が与える影響の大きさ
  • 改めてキャリアの成功につて結論づけ

キャリア・サクセスとは?

キャリア・サクセスとは、自分が成功できているのかを「客観的」「主観的」な観点で見ていくものです。

客観的に見てわかる成功(客観的成功)と、当事者の精神面で実感する成功(内面的成功)があり、それら両方が必要と言われています。
また、客観的・主観的な成功要因の相乗効果もあげらています。

客観的成功

客観的成功の指標と実現要因には以下があります。*1)

【指標】

  • 給料
  • 昇進・職位

【実現要因】

  • 教育レベル
  • 訓練やスキルの向上の機会
  • 豊富な経験(海外経験や組織での勤続年数など)

しかし、客観的成功のみだと問題が出てきます。
例えば、側から見れば上手くいっているようだけど、本人は仕事内容に不満だったりする場合です。
そういった点を補うために、主観的成功が必要になってきます。

主観的成功

主観的成功は、個人に意味づけされるものです。
個人の価値観や性格などによって、成功のあり方は多様になります。
明確な定義はありませんが、主な実現要因としては以下が挙げられます。*1)

  • 人とのつながり(人脈、周囲からのサポートなど)
  • チャレンジングな目標や仕事内容
  • 精神面の要因(外向性、協調性、安定性など)

客観的成功と主観的成功の関係

キャリアサクセスの実感は、主観的成功と客観的成功の要素が影響し合うと言われています。
特に、客観的成功 → 主観的成功への流れは、仕事を通じて自尊心を向上させられると言われ、心理的成功モデルとして説明されます。

  • 目標の設定
    客観的に成功と言えて、かつ主観的にも魅力ある目標を設定する
  • 目標の達成(客観的成功)
  • 自己有能感や成功体験の実感(主観的成功)

客観的・主観的の両方を実現するような、目標管理が必要になってきます。
そのプロセスにあたっては、コーチングのテクニックが必要になってきます。

キャリア・サクセスの問題点

ざっとキャリア・サクセスについて説明しました。
とはいえ、思い通りにはいかない懸念もあります。

成功体験を積めれば良いけど、「今の職場の人間関係では無理そう」と言うケースも多いからです。
特に、職場の人間関係の良し悪しや労働環境の影響は大きくなってきます。

ネガティブ要因の排除がベースに必要?

転職に関するメタ分析を集約した「科学的な適職」においても、ネガティブな影響の大きさを説明しています。*2)

この本では、ポジティブな要因(自由な働き方、待遇向上など)が叶えられないことに比べて、ネガティブな要因の方が、労働者へ与えるストレスは6倍にもなると言っているのです。
現状ではネガティブな側面の影響がかなり過小評価されていると感じます。

ネガティブ回避がキャリア方針になると窮屈

では、ネガティブな要素をできるだけ排除して、無難にキャリアを積むことが成功なのか?
一つの見方ではありますが、それはまるで綱渡り状態のようで、窮屈に感じるかもしれません。

思考や行動が保守的になりすぎる可能性もあります。
守りに入ることで機会の損失も招きかねないので、必ずしも正しい方針とは言い切れないかもしれません。

あたらめてキャリアの成功をどう判断するべきか?

では、どういう観点でキャリア・サクセスを判断すべきか?
別の見方としては、「今まで積み上げてきた、仕事の質と量」で判断するという点です。

キャリアの成功とは、自分が積み上げてきたもの

例えば、以下の内容などが挙げられます。

  • 実務経験を詰めた領域
  • 業務知識や、受けられた訓練・取得した資格
  • 仕事で改善した事
  • 同僚・上司・取引先から評価された事
  • 得られたマインド

先ほど触れたような、ワークライフバランスの欠如や、悪い人間関係などといった、ネガティブな要因は、言ってしまえば「その会社、その職場に限った話」です。

一方、積み上げてきたもの(経験や知識)は、無くなることはありません。
スキルや経験が、ネガティブ因子に勝てるポイントは、環境が変わっても失われないです

例え今の職場環境に問題があっても、「積み重ね」がそれになりにあれば、ネガティブ因子を気にせず、環境を変えて再チャレンジすると考えられるわけです。

もちろん、そう考えにくい状況もあるかもしれません。
例えばこのような場合です。

  • 経験がまだ不十分と感じる場合
  • 職場での評価がイマイチなので、自分のキャリアに自信がない場合

以下ではそういう状況への対処法について、見ていきたいと思います。

経験の積み重ねが、不十分と感じる場合

このような場合、スキルアップを目的としたキャリア軸を作っていく必要が出てきます。

具体的には、

  • いかに安全な環境でスキルを高められるか
  • 短期間で、成功と言えるレベルのスキルまで上げる為に、どんな環境が良いか
  • 自分の長所を伸ばしつつ、スキルアップできる環境はどこか

といった軸で、キャリアの方針を考えていくようになります。

職場での評価がイマイチで、キャリアに自信がない場合

こういう場合、「他でもやっていけない」と心配にもなりますが、ネガティブな評価ばかりを参考にしないという点が必要になってくると思います。

評価するのも人間です。必ずしも正しい評価をするとは限りません。
特に上司一人の評価ばかりを信じるのはリスクがあるでしょう。

人が誤った見方をする現象である「認知バイアス」には、沢山の種類があることが分かっています。
その中には職場のような密な人間関係で起きやすいバイアスもあります。
詳細は別で取り上げようと思いますが、今回は実際に職場で起きやすそうな認知バイアスについて、紹介します。

  • 行為観察者バイアス
    これは他者の努力を過小評価してしまうバイアスのことです。
    例えば他者の成功は運や環境によるものだと考えたり、逆に他者の失敗は本人自身に問題があると思ってしまうケースです。
    これは、他人が置かれている状況を正確に把握できないまま、「自分だったらこうするのに」と考えてしまうことで、発生すると言われています。
    職場においても、
  • 自己奉仕バイアス
    これは自分自身の成功を過大評価するバイアスです。
    自分の成功は努力によるものだと考えがちで、逆に他人の成功は運や環境によるものと思ってしまう傾向があると言われています。
    これは、挫折体験を克服するために存在しているバイアスともいわれ、自尊心を持つためにも必要という見方もあります。

相手のバイアスによって、正当に評価されない事もあるのです。
特に、自分にネガティブな評価をする上司や同僚が、このようなバイアスに陥っている可能性もあります。

ネガティブな評価ばかりを参考にせず、他の観点での評価も参考にするべきです。

そのためにも、

  • 上司以外の評価も参考にする
  • 職場以外の居場所、能力や性格面でのフィードバックを受けられるようにする
  • 副業や趣味などにチャレンジして、自分への評価を見直す

人からの評価は気になりますが、必ずしも正確ではありません。
不確かな評価に振り回されないことが、キャリア・サクセスを見ていくポイントと言えるかもしれません。

職場での評価が芳しくないので、転職に懸念がある場合

*1) 産業・組織心理学 ー3章:キャリアの展開と育成ー
https://www.amazon.co.jp/dp/4595321805/ref=cm_sw_r_tw_dp_ZHHKX9XNHWYTGSDQPNDY

*2) 鈴木 拓 科学的な適職
https://www.amazon.co.jp/dp/B082NWJHND/ref=cm_sw_r_tw_dp_Y0MGWN0RG526Q4TRAHZV

コメント

タイトルとURLをコピーしました