【スキルアップ × 心理学】#6 「できる」スキーマの作り方(実践でスキルを磨く方法)

スキル/キャリア

今回は、前回の記事の続編で認知の仕組みを活かしたスキルアップ術について解説していきます。

今回は、以下のような方向けの内容になっています。

  • 自身のスキルアップに活かしたい方
  • 部下やチームの育成・コーチングに活かしたい方
  • 座学や勉強だけでなく、実践でスキルを磨く方法を確認したい方
  • スキルや知識を機能的に整理して、応用力を高めたい方

Phase~2: 知覚インプット、状況把握のまとめ

前回の記事では、

  • 人間の認知と行動のしくみは、ACT-Rというモデルで説明可能
  • ACT-Rモデルを参考にすることで、段階的にスキーマを習得できスキルアップにつながる

スキーマの習得は、以下のフェーズごとに行うことで効果的にできるようになります。

  • 知覚による情報インプット
  • 状況把握
  • 目的把握
  • 判断や思考
  • アウトプット行動

前回の記事では、以下のフェーズについて解説しました。

  • 知覚による情報インプット
    感覚(視覚、聴覚、体性感覚など)を駆使して、知覚情報をインプット。
    優位な感覚は個人差があるので、得意な感覚を使ってインプットするのも有効な方法 *1)
  • 状況把握
    様々で複雑な状況を、訓練や工夫によって効率よく把握
    把握する状況情報の正確さや速度を高めていく *2)

今回のその続きの「目的理解」から見ていきたいと思います。

Phase3: 目的理解

目的理解では、把握した状況を元に取るべき行動を理解していきます。

以下に前回記事で記載した状況把握の例を元に続編を記述していきます。

事例:アサーションスキル。仕事において過剰な要求が来たときの対処法

目的理解:
・状況的には、依頼された仕事量はキャパオーバーぎみ
・しかし、自分の部下は手空きが出そうなので、仕事を振れる可能性があるので、その方向で交渉してみる
事例:数学などの受験勉強や資格勉強における、応用問題を解く場合

目的理解:
・状況把握によりそれなりの難易度であると感じた。
・時間内の完答は難しいかもしれない
・ただし過去に解いた問題とある程度類似しているので、設定した時間内にできるところまで問題を解く
事例:プロジェクトの進捗管理

目的理解:
・状況把握により、今後進捗遅れが発生する可能性を確認。
・原因は見積時に判明しなかった作業で、それが用意していたバッファ(余裕時間)を圧迫してる

Phase4: 判断・思考

  • 「技能・知識」の定着
    関連の「技能・知識」を頭に定着させる
  • 「技能・知識」のマッチング
    状況・目的に応じて必要な「技能・知識」をマッチングする訓練をする
  • 実行のイメージ
    マッチングした「技能・知識」を使ってどのように行動するかをイメージする

では順番に見ていきましょう

「技能・知識」の定着

脳の仕組みにを活用して、「技能・知識」を強化していく

技能・知識を定着させていくためには、その前提として脳の仕組みを踏まえる必要があります。

知識や技能も記憶の一種ですが、
人間の記憶は、思い出す(想起する)ことを繰り返す
して強化されていきます。

受験勉強でも、最初はうる覚えだった知識を何度も思い出すと、記憶が定着していきますよね。

これは、人間の記憶は大脳の神経ネットワーク内に存在しており、想起を繰り返すことで回路が刺激され、太くなっていくためです。

人間の記憶の仕組みを踏まえた上で、
次ではどのように「技能・知識」を蓄えていくべきかを見ていきます。

技能に知識を紐づけて、「技能・知識」を豊富に蓄えていく

様々な状況に応じて対処していくためには、「技能・知識」の量は重要になります。

「知識・技能」が記憶に豊富にあることで、次のフェーズである「マッチング」に備えることができます。

そして、記憶を蓄えるポイントは、技能を主体にして、必要な知識を紐づけていきます。

技能に知識を紐づけるイメージ

以下に例を書いていきます。

「技能・知識」の例

以下で、技能とそれに知識を対応付ける例を見ていきます。

事例:アサーションスキル。仕事において過剰な要求が来たときの対処法

技能(場合によって意識や姿勢という言葉で表現)
 A.会話の切り出しや会話テンポを調整する技能
 B.交渉方法 (協働:双方のメリットを最大限活かす考え方)
 C.交渉方法②(協働が難しい場合に、妥協点を探って納得する考え方)
 D.相手に仕事量の交渉する際に湧いてしまう自責の念を感じにくくする意識
 E.必要に応じてクッション言葉を使えるようにし、スムーズな意思疎通をする技能

知識の対応付け
・技能Aに対応する知識
 ミラーリング(会話テンポを合わせてスムーズに)の知識 *3)

・技能B,Cに対応する知識
 コンフリクトマネジメント *4)

・技能Dに対応する知識
 自分の経験によって得た知識

・技能Eに対応する知識
 クッション言葉:「ご期待に沿えないのは残念ですが、…」「最善を尽くしますので…」
事例:数学などの受験勉強や資格勉強における、応用問題を解く場合

技能
 A.問題の解法パターン
 B.答案作成能力 

知識の対応付け
・技能Aに対応する知識
 数学の公式

・技能Bに対応する知識
 答案作成能力 *5)
事例:プロジェクトの進捗管理

技能:
 A.タスクの調整(担当の見直し、スケジュールの見直し)
 B.コーチングをしながらメンバーの生産性を上げる
 C.作業の見直し(作業の合理化、不要作業の排除)
 D.意見交換や報告を活性化するチーム作り

知識の対応付け
・技能Aに対応する知識
 クリティカルパスへの対処、EVMの活用、バッファの調整

・技能Bに対応する知識
 コーチングの知識(ワークエンゲージメントの活用、フィードバックの充実)
 
・技能Cに対応する知識
 作業を生産性(業務量/投入コスト)で評価

・技能Dに対応する知識
  心理的安全性を活用して、チーム作りに活かす

技能を主体にする理由は、あらゆる行動は身体を使って行われるからです。

技能というのは分解すると、実行の手順になります。
そのため、実行する前提でスキーマを作っていく必要があるのです。

そこでまずは手順化された技能に対し、知識を適切に使っていくことで、スキルの質を高めていくことができます。

「技能・知識」のマッチング

次に、状況に合わせて技能のマッチングを行っていきます。

どのような技能が適切かを検索し、適切な技能を選択します。

事例:アサーションスキル。仕事において上司から過剰な作業量が来たときの対処法

技能
 A.会話の切り出しや会話テンポを調整する技能
 B.交渉方法 (協働:双方のメリットを最大限活かす考え方)
 C.交渉方法②(協働が難しい場合に、妥協点を探って納得する考え方)
 D.相手に仕事量の交渉する際に湧いてしまう自責の念を感じにくくする意識
 E.必要に応じてクッション言葉を使えるようにし、スムーズな意思疎通をする技能

マッチングの例:
・状況を踏まえると、自分はキャパオーバーだが部下は手空きで仕事が振れそう。

・そのため、技能Bの「協働」で交渉してみる
(部下へは育成目的で仕事経験が増えるので、上司にとってもプラス、自分のキャパオーバーにもならないのでプラス)

・技能Dによって、交渉切り出しの後押しをする
事例:数学などの受験勉強や資格勉強における、応用問題を解く場合

技能
 A.練習した問題の解法パターン
 B.答案作成能力

マッチングの例:
適切な公式を選び、答案作成術を活用していく
事例:プロジェクトの進捗管理

技能
 A.タスクの調整(担当の見直し、スケジュールの見直し)
 B.コーチングをしながらメンバーの生産性を上げる
 C.作業の見直し(作業の合理化、不要作業の排除)
 D.意見交換や報告を活性化するチーム作り

マッチングの例:
・状況的に特定のメンバーの生産性向上で改善しそうなので、「B.コーチング」や「D.チーム作り」を取り入れてみる。

・とはいえ、タスク管理も必要なので、「A.タスクの調整」の不要作業も行ってみる

実行のイメージ

次にこれから行う行動をイメージしていきます。

これは実際に脳の「頭頂領域」という部位で行われており、イメージが出来ることで行動が可能になります。

またイメージする事で、自分がしようとしていることを慎重に検討したり、よりよい行動が模索できたりします。

一般的にイメージが湧くかどうかが、行動の実効性になってくると思うので、重要な工程となりますよね。

参考記事

1) ACT-Rに基づいたスキーマ形成:「知覚インプット」フェーズ
https://mindhack-lab.com/skill/skillup-schema-makemodel/#toc4

2) ACT-Rに基づいたスキーマ形成:「状況把握」フェーズ
https://mindhack-lab.com/skill/skillup-schema-makemodel/#toc8

3)ミラーリング
https://dekirukaiwajutu.com/category8/entry170.html

4) コンフリクトマネジメント
https://www.kaonavi.jp/dictionary/conflict-management/

5) 答案作成能力について
https://passnavi.evidus.com/article/study/202003_04/02/

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