性格は「変える」のではなく新しい一面を「加える」

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よく「性格を変えたい」「もっとこういう性格だったらよかったな」と悩むことは多いかと思います。

そこでこの記事では、性格とは心理学的にどういうものかを見た上で、性格は変えられるのか?
また、そもそも変える必要はあるのか?といった点も触れていきたいと思います。

性格とは?

一般的に人となりは、「性格」と言われますが、心理学的には様々な用語があります。
まずはそれらの定義を見ていきましょう。

【人格】
パーソナリティ、性格、気質、特性などを含んだ形で、その人となりを全般的に表す概念。
それぞれの概念は下記へ記載。

【パーソナリティ】
各々の個性や個人差を表すもの。
実験等により観察されるもので、先天的な要素と後天的に習得される要素がある

代表的なものとして以下が挙げられる:
① ビッグファイブの特性 (下記に図添付)
開放性・誠実性・外交性・調和性・神経症傾向

② 成熟したパーソナリティ (Allport 1961)
自己意識の拡大・他者との温かい関係・情緒的安定・現実的な認知と問題解決スキル・自己客観性・統一した人生観)がある。

【性格】
一般的に人となりを表す際に使われる言葉。
心理学的に使われることは少ないが、かつてはその人が先天的に持っていて変わらないものを表す言葉で使われていた。

【気質】
その人の生物学的な特徴のこと
乳幼児における「扱いやすいこども」「扱いにくい子供」「エンジンがかかりにくい子供」のように分析できることを示した研究もある(Thomas & Chess 1977)

ビッグファイブによるパーソナリティ特性の図

性格は変えられるのか?

この問題については、上記で定義したパーソナリティは変化する部分があると言われています。

ビッグファイブをはじめとしたパーソナリティの研究によれば、パーソナリティの個人差は4~5割は遺伝性で、残りの5~6割は生育の環境によるものであるという結果が得られています

これは、双子を対象にした研究で、パーソナリティの個人差を遺伝・共有環境・非共有環境で説明しようとした研究です。
そして、そのうち個人差に影響するのは遺伝と非共有環境(=親以外の環境)との結果が出ています(以下詳細)

・遺伝
先天的なもの
パーソナリティにおいて、個人差を説明できる要素は4〜5割程度

・共有環境
後天的なもので、家庭教育や親の影響によるもの
パーソナリティのおいて、個人差を説明できる要素はほとんど無い

・非共有環境
後天的なもので、子供自身の体験によるもの
パーソナリティにおいて、個人差を説明できる要素は5〜6割程度

このように、非共有環境 ー つまり個人の体験で得られる要素半分以上を占めているため、パーソナリティは変えられると言えます。

では性格を変えるべきなのでしょうか?
例えば「内向的だから外交的になりたい」「もっと論理的な性格になるべき」といった具合に。

しかしそこまで極端に考える必要はなく、
パーソナリティはその人の経験で感じてきた事や、環境に適応するために形作られてきたものであるため、当然必要なものだと思います。

その一方、新しい環境へ適応するために、自分に新たなパーソナリティを追加する必要性が出た場合に対処していく事はあるかもしれませんね。

例えば何かにチャレンジする場合に、「内向的な一面として、もう少し自分を分析できるようにしたい」という事などです。

つまり性格を別人のように変える、ではなく、自分に色々な一面を増やして人格を発達させていく、と言うのが正しい認識なのかもしれません

人格の発達

では、人格はどのように発達していくのでしょうか。

2000年台に入ってからの研究によれば、人格はライフストーリーによって発達していくと言われています(McAdams 2006, Funder 2010)。

ライフストーリーとは、就職や昇進、結婚、子育てなど様々な出来事を通じて、振り返って作られる自分の中の物語です。
ライフストーリーができてくることで、人格に「冷静さ」「情緒的安定」「自己客観性」などポジティブな一面が増えてくると言われています。

よく新しい自分を発見した、と聞くことがありますが、これが人格の成長なのかもしれません。
また、10代の逸脱行為が見られる学生に対して、ボランティアなどの奉仕活動をしてもらうことで、自己有能感が持てるようになった研究データもあります。

大事なことは、自覚している人格を尊重すること。それはつまり、自分はこう考えるが、それは自分の経験や見てきたことによって形作られたものである。
そして、自分に新しい一面が加わることによって、元々あった人柄がより輝いてくるのだと思います。

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